第29回大連市キャノン杯日本語スピーチコンテストのパンフレット写真
【浩一解説】
私は今までにたくさんの学生のスピーチ強化練習の指導をしてきましたが、その中で最も短期間で上達したのがこの张慧怡さんです。半年間の練習で校内予選と学外予選を突破して大連市キャノン杯日本語スピーチコンテストの決勝戦に出場し優秀賞を獲得しました。キャノン杯の決勝に出場する選手には2年以上の練習をしてきた選手も少なくありません。
張さんが短期間で上達したのは優れた理解力と様々な努力をしたからだと思います。私がスピーチについてアドバイスするといつも私の期待以上のものを見せてくれました。色々な経験をして、色々な資料を調べ充実したスピーチができるように努力していたようです。半年間で見違えるように成長しました。
スピーチ大会で「環境問題」についてのテーマが出されることがあります。「PM2.5」や「ゴミの分別」などの環境問題がニュースで話題になることもすくなくありません。環境問題のテーマについてスピーチするときには「私」との関わりという視点が大事です。それと同時に日頃よく聞く抽象的な言葉だけでは内容が浅い印象になってしまいます。私という視点とやや深めの内容の両方が必要です。そして時には「〜問題のために私にできること」というテーマが出され「私ができること」を具体的に述べなければならないこともあります。
次の部分で张慧怡さんが作成した環境問題をテーマとしたスピーチ原稿を皆さんに紹介します。今東京にいる張さんの同意を得て紹介します。
決勝戦には私の指導した项往（左）と张慧怡（右）の二人が出場しました。中央は筆者です。
（引用開始）
【张慧怡さんの環境問題に関するスピーチ原稿】
私の発表するテーマは「私が考えるリサイクルの必要性」です。
半年前、日本に留学した楊さんが私にこんな話をしてくれました。「日本のゴミの分別は本当にたいへんなんだよ。燃えるゴミ、燃えないゴミ、ビン、缶、乾電池、特に牛乳パックは洗ってから捨てなきゃいけないんだよ。中国のように直接、捨てれば、楽なのになあ〜」日本で生活する楊さんにとってゴミの分別は大きな悩みになっているようでした。
ところが、先日、楊さんと電話で話してみると、楽しそうに、「ね、知ってる？日本のトイレットペーパーはリサイクルした牛乳パックや古紙から作る再生紙なんだよ。」と話してくれました。楊さんによると「リサイクル」は資源を節約するためのすばらしい方法でありそれを考えるともう分別することはつらくないそうです。私は楊さんの態度が大きく変わったことにびっくりすると同時に、普段の自分の生活を反省してみました。
まず思いついたのは段ボールです。私はいつもネットで買った小包のダンボールをすぐに捨ててしまいます。自分の買った物が早く見たくてダンボールを破って開けてしまったこともあります。ところが、最近ある宅配会社が発表したデータによると、毎週、この会社が回収するダンボールは約５千個、それをリサイクルすると、毎年、１０万株の木を切る必要が無くなるそうです。この会社の会長は「限りある資源を守るために、多くの人がダンボールのリサイクルに協力してほしいです。皆さんの力が必要です。」と訴えていました。
今年、中国ではダンボールの代わりに「共享快递盒」「共用宅配ボックス」と言うものが登場しました。この宅配ボックスはビニール製で、千回以上も繰り返して使えて、その上リサイクルもできます。私たちの周りで少しずつ資源を節約するためのリサイクルが進んでいます。
今、私はリサイクルできるようにダンボールの形を壊さないように開いて、回収の場所に持って行きます。私にできることは小さなことかもしれませんが、「一人の百歩より、百人の一歩」と言います。もし一人ひとりがリサイクルの必要性を理解して行動すれば、限りある資源を守れることができるのではないでしょうか。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
（引用ここまで）
【浩一解説】
张慧怡さんのスピーチ原稿はいかがでしたか。「私」の視点、調査した少し深めの内容、自分は具体的に何をするのかの三つが入っていたのではないでしょうか。日本語で大勢の人の前でスピーチするのは決して簡単な事ではありません。フラマホテルで行われるキャノン杯の決勝にはわずか6人の学生しか出場できません。その夢を叶えた张慧怡さんの努力に敬服するとともに、キャノン杯の決勝を目指して頑張った数多くの学生の皆さんの努力に敬意を表したいと思います。この記事が今、頑張っているみなさんの参考になれば大変に嬉しいです。
中央が最優秀賞、项往さんと张慧怡さんは優秀賞でした。決勝戦の舞台に立った二人の努力は素晴らしかったです。